2025年も残すところあと数時間となりました。今年は13年ぶりに訪れたアジアの地で、この一年を静かに振り返っています。
前回訪れた際は時間がなく、ある一都市で過ごすのみでした。しかし今回は、南から北へと移動を重ね、なるべく多面的にこの国の姿を捉えようとしています。同じ国であっても、これほどまでに印象が変わるものかと、その奥行きの深さに驚かされます。
そうして目の当たりにした多様な景色と、自分自身やARAVという会社が歩んできた道のりを重ね合わせ、不可逆な時の中で確かな変化と成長を実感する大晦日です。
バックキャスト思考の実践と選択と集中
昨年の年末年始に掲げたバックキャスト型の経営マインドセット。未来の理想像から逆算して現在の手を打つこの思考法が、この一年でようやく板についてきた感覚があります。
おかげさまで、第6期は増収増益での着地見込みとなりました。足元の数字に追われるだけでなく、少し先の未来を見据えて投資する体力がついてきたことは、会社としての大きな前進です。
掲げた目標については、約3分の2を達成することができました。一方で、意図的に一旦お休みとした目標もあります。それが宇宙分野です。
昨今の米国の急激なロードマップ変更に伴い、月面開発から衛星軌道上へとピボットせざるを得ないロボット系スタートアップの苦境を目の当たりにしました。
私もリサーチを進めましたが、夢だけで会社は進められません。長期的なビジョンとしての宇宙は引き続きウォッチしつつも、今は足元の地上での自動化や無人化で圧倒的な実利を生むフェーズであると判断しました。
Founder Mode:現場への回帰と権限移譲のバランス
シリコンバレー界隈で話題になったFounder Mode、いわゆる創業者モードという言葉。仕組みを作って任せるManager Modeも組織拡大には不可欠ですが、時には創業者が現場の最前線に立ち、泥臭く課題を解決しなければならない局面がある。今年はまさにその両輪を回した一年でした。
ソリューション開発の現場で炎上しかけたプロジェクトに対し、私自身が臨時ヘルプ要員として入り、要件定義から整理し直す場面がありました。また、プロダクト開発においても担当メンバーの離脱というピンチがありましたが、これもリリースまでやり切り、夏の専任営業担当の採用までバトンを繋ぎました。
任せることと、背中を見せること。このバランスの中で、組織としての粘り強さが養われたと感じています。
組織の進化:柏への移転と三現主義の徹底
今年の下期、急速に変化する市場環境に対応するため、技術部隊の半数を千葉県柏市へ移転するという大きな決断を下しました。
メンバーにとっては通勤環境が変わるなど負担も少なくありませんでしたが、OEMやODMパートナーにも柏に来ていただき、建設機械という商品のすぐ傍で働く環境、すなわち三現主義へと舵を切りました。
結果として、これが大正解でした。建機を肌で感じながら開発することで、より良いソリューションが生まれる素地が整いました。
組織としては自動化チームと遠隔化チームに分けることで、重複部分はありつつもBCP的な役割分担が可能になり、アメーバ経営に近い自律的な動きが出てきています。市場成長に伴う要求仕様の高度化に苦しむ場面もありましたが、結束力の高い、素晴らしいチームに育ってくれました。
事業の二本柱:ソリューションとプロダクト
今年のARAVは、屋台骨であるソリューション型と、飛躍のためのプロダクト型、この2つの事業領域が明確に輪郭を帯びた一年でした。
1. ソリューション型(堅実な屋台骨)
特注の後付け装置を受注生産するレトロフィット事業です。2024年に新規での少額取引を原則廃止し、単価上昇を図った意思決定が功を奏し、利益率が向上しました。
ここには業界構築の再現性という確かな勝ち筋が見えています。まずはニッチな建機の遠隔操作から入り、実績を作る。すると顧客から信頼を得て、自然と自動化の相談へと発展する。このプロセスでロックインが進み、継続的な発注フェーズへと移行しています。ここで得られた膨大なノウハウは蒸留され、次のプロダクト事業へと昇華されています。
2. プロダクト型(指数関数的な成長へ)
今年最大のトピックは、自動かつ無人の油圧ショベルRX、通称ヨイショ投入くんのリリースです。これまで大手ゼネコン主導で進められてきた自動化技術を、中小や地域建設会社でも使える形にパッケージ化し、民主化への道を開きました。
業界の流れとしても、遠隔施工による省力化に加え、部分自動化による省人化へのニーズが急速に高まっています。i-Construction 2.0の流れを汲み、全てを自動化するのではなく、ホッパー投入などの特定工程を自動化することで確実に人を減らす。先進的なパイロットユーザー企業様と共に、この使える自動化の実例を作れたことは大きな成果です。
また、トップラインだけでなく、現場での利用率をKPIに置いたことも奏功しました。自社レンタルや広域レンタルとの提携を通じてフィードバックを集めきり、ハードウェアの要件を固められたことで、次世代プラットフォームの製造に着手できています。
ビジネスの逆説:絞り込みが生むスケーラビリティ
この一年で強く感じたのは、ターゲットを絞り込み、エッジを立てるほど、逆にスケーラビリティが描けるという逆説です。
何でもやりますという柔軟性はスタートアップの武器ですが、リソースの限られた小資本だからこそ、バックキャストで描いた未来への最短パスを通るためにやらないことを決める必要があります。あえて型番や機能を固定したヨイショ投入くんの展開から、この重要性を改めて学びました。
マーケティングとグローバル展開
マーケティング面では、創業初期のX中心の戦略から、お休み期間を経て、YouTube中心へとシフトしました。建設機械の迫力や自動化の挙動は動画との相性が抜群で、建機メーカーの公式チャンネルを超える再生回数を叩き出す動画も生まれています。あえてユーザーからの率直なフィードバックも隠さずに公開することで、信頼獲得に繋がっていると感じます。
グローバル展開については、ソリューション型のようなあうんの呼吸が必要なモデルではなく、言語不要で価値が伝わるプロダクト型で攻める戦略です。今年は西側諸国とのサプライチェーン構築で試験的な取引を開始できました。来年は、私がかつて住んでいた東側エリアの顧客サイトで、実際に試験運転を開始することを目標としています。
2026年に向けて
来年はソリューション事業の組織的な自律化をより盤石なものとし、その基盤の上でプロダクト事業を以下の3点を軸に加速させていきます。
- 顧客自身による設定の簡便化:現在私が現場で行っているウェイポイントやパラメータ設定を、顧客自身で完結できるUI/UXへ昇華させ、スケーラビリティの課題を解消します。
- 製造およびサポート体制の革新:従来のパートナーに加え、新たなパートナーと共に次期プラットフォームの製造に着手します。あわせて、故障時の修理に時間がかかる現状を打破するため、センドバック体制の構築準備を進めます。
- ヨイショ投入くんの大幅アップデート:ホッパー投入に加え、ダンプトラックへの積み込み機能をリリースします。また、期待値調整が完了したタイミングを見計らい、リブランディングも実行します。
そして最後に。まだお見せできませんが、創業期から構想を温めてきた、さらに未来を先取りした新しいコンセプト建機の建造に着手することができました。途中の組み立て工程にも立ち会いましたが、ARAVらしさを確かに表現できていると感じます。実際に動く実機として、来年にお披露目できる予定です。これがARAVの新たなアイコンになると確信しています。
夢と現実、長期と短期、ソリューションとプロダクト。これらのバランスを取りながら、2026年もロボティクスのフロンティアを切り拓いていきます。
本年も多大なるご支援をいただき、ありがとうございました。
2026年もよろしくお願いします🙂

